連載「創世記をひらく」第11回 ―― 創世記1章31節「非常に良かった」
『大切なキミ』という絵本があります。木でできた小人たちが暮らす、村の話です。小人たちは毎日、おたがいにシールを貼り合っていました。すてきな人、上手にできた人には、金色の星のシール。失敗した人、見ためのさえない人には、灰色のダメじるし。
パンチネロという小人は、いつも灰色のシールばかり貼られて、うつむいていました。ある日、彼は、自分を造った木彫り職人エリのところを訪ねます。エリは言います。「わたしは、おまえを、はじめから大切に思っているよ」。すると不思議なことに、彼に貼られていたシールが、ぽろり、ぽろりと、はがれ落ちていったのです。
私たちの社会も、どこか、このシールの村に似ています。できるかどうか、役に立つかどうかで、人は人に――そして自分に――値札を貼ります。
カフカという作家の『変身』という小説では、ある朝、主人公が虫の姿になってしまいます。働けなくなった彼を、家族はやがて「あれ」と呼び、人として扱わなくなる。価値を失ったとたん、人が「不要なもの」に格下げされてしまう――その怖さを、この物語は描いています。だからこそ、多くの人が、心のどこかで息苦しさを感じながら生きています。「良い親でなければ」「誰かの役に立たなければ」。貼られたシールに、しばられて。
けれど、聖書は、まったく別のことを告げます。世界を造り終えた神は、人を含むすべてを見て、こう言われました。
「見よ、それは非常に良かった。」
あなたという存在に、神が最初に貼った「シール」は、これでした。良い成績でも、役に立つかどうかでもなく、ただ「非常に良い」。あなたを造った方が、はじめから、あなたを大切に思っている。
その声を聞くとき、後から人に貼られたシールは、ひとつ、またひとつと、はがれていきます。では、その「いちばん最初の声」は、今、どこで聞けるのでしょうか。いよいよ最終回で。
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